BCPコラム

火災時の生存率を高め後遺症を軽減する方法

逃げ道がふさがれた!

建物内で火災に遭遇。しかし、避難経路は煙と炎でふさがれている。
そんなときは救助隊が到着するまで、安全な場所で待機しなければならない。

  火災時の鉄則といえば「煙を吸わない」こと。
煙には人体に有害な有毒ガスが多量に含まれており、中でも一酸化炭素による中毒症状は、身体の自由を奪い、そのまま炎にまかれるリスクを急増させる。
また、急性一酸化炭素中毒に陥った場合、運良く救助されたとしても、その後の生存率や社会復帰には大きな影響が及ぶ。

命は助かった。だが後遺症は残る

重度の一酸化炭素中毒患者に対しては、高気圧酸素療法(Hyperbaric Oxygen Therapy)が行われる。大気よりも高い圧力環境下で酸素を吸入することで、血液中にたくさんの酸素を溶かし、体内の酸素濃度を上げる効果が得られる。
血中一酸化炭素濃度が低い場合などは数時間程度の治療で十分な改善が見られるが、中毒濃度が高い場合は治療時間が長くなる傾向がある。また、後遺症の重症度についてもこれと同様だ。

一酸化炭素中毒症による主な後遺症は以下の通りである。

  • ・著しい自発性低下
  • ・見当識障害
  • ・健忘症候群がみられる
  • ・失外套症候群の状態
  • ・パーキンソン症候群
  • ・失語・失行・失認
  • [画像等引用] 安全工学会 「安全工学」5巻3号 稲永和豊著 「急性一酸化炭素中毒の後遺症」より
    上図のようなモデルを書いて模写させたところ下の図のような図しか書けなかった。
    九州地図を示して、六つの都市の位置を記入させたところこのような奇妙な結果が見られた。
    計算を紙に書いてもらったがこの図のように不可能であった。15+16=?に対しては意味のわからない数字を並べている

    以上のように、火災時には、その場において生存を目指すことは当然ながら、その後の社会復帰のために、可能な限りの健康被害の軽減という視点が必要となる。「煙を吸わないこと」という鉄則には、ふたつの意味が込められているのだ。

もしもための安全空間「エスケープエリア」

非常階段などの避難経路がふさがれており、かつ自分が建物の3階以上(飛び降りることができない高さ)にいる場合の対処法としては「エスケープエリア(一時避難スペース)」が挙げられる。

京都市消防局 [「火災から命を守る避難」動画 2-D 一時避難スペース編]


エスケープエリアとは、扉等で区画され一時的に煙や炎の侵入を防ぐ事ができ、かつ外気に面した窓がある部屋のことを指す。
一時避難スペースへの避難後は、まず排煙のために窓を開ける。次に、煙の侵入を防ぐため、ドアと壁体の隙間や鍵穴等に、テープやティッシュ等で目張りを行う。
そのため、一時避難スペースとなる場所は事前に想定しておき、その部屋には必要な器材を準備しておくことが大切となる。

推奨器材:アルミテープ、防煙マスク、避難器具、ライト、拡声器、笛、水、消火器

また、一時避難スペースに煙が侵入してきた場合でも、窓を開放し「くの字」に腰を折り曲げ、頭を地上に向けて窓の下の方の外気を吸うことで、避難限界時間を延ばすことができる。
これを「窓でのサバイバルポジション」と呼ぶ。

[画像引用] 京都市消防局 [火災から命を守る避難の指針]

まとめ

2023年2月22日、同志社大学・北岸宏亮教授らの研究グループにより、血液中の一酸化炭素やシアン化水素と強く結合する化合物「hemoCDーTwins」の開発が発表された。
現場での使用はまだ先となるそうだが、これにより搬送前、搬送中に治療を開始することができるため、一酸化炭素中毒による死者の減少が期待できるという。

救助される立場になったとき、逃げ道を失ってもできることはある。
最後まであきらめず生存率を高めるためにも「命を守る行動」は覚えておきたい。

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