電子レンジ火災が過去最多ペースに
空気が乾燥するこの季節。 全国各地で火災が多発する中、電子レンジから出火するケースの増加が目立っている。
東京消防庁の発表によると、都内で発生した電子レンジ火災は2022年12月5日時点で74件。これは、過去最多だった昨年をすでに上回っている。
電子レンジによる火災の年別発生状況(過去5年間)
[引用元] 東京消防庁[電子レンジ火災が急増!令和 3 年の65件を上回る74件発生!!
電子レンジ火災の原因は
同庁の資料によれば、電子レンジ火災に至る要因の約7割は「過熱」「考え違いにより使用を誤る」のふたつだという。
■過熱→主に食品等を長時間加熱し過ぎて出火したもの
事例1 「電子レンジでおにぎりを加熱し過ぎたために出火した火災」
(令和3年4月 15時頃 複合用途 負傷者なし)
【概要】
この火災は、複合用途建物の1階物品販売店舗の来店客用の電子レンジから出火したも のです。
出火原因は、来店客(年齢不詳)が購入したおにぎりを電子レンジで加熱し過ぎたため、 出火したものです。
■考え違いにより使用を誤る→主に電子レンジ調理不可のアルミ製の包装ごと加熱したため出火したもの
事例3 「電子レンジでアルミホイルを加熱して出火した火災」
(令和3年10月 18時頃 複合用途 負傷者なし)
【概要】
この火災は、複合用途建物の3階共同住宅の台所の電子レンジから出火したものです。 出火原因は、居住者(20 代)がプラスチック製容器に入っているアルミホイルに包ま れた焼きそばを電子レンジで温めたところ、アルミホイルが電子レンジから発生したマイ クロ波を受けて放電し、プラスチック製容器に着火して出火したものです。
[引用元] 電子レンジを使用した火災が増加しています!~ 過去10年間で最多 ~
目立つ若年層の電子レンジ火災
また、電子レンジ火災の特徴として、行為者を年齢別に見た際に20歳代前半が約16%と最も多くなっている。
電子レンジによる火災の行為者年齢区分(過去5年間)
電子レンジの使用が当たり前で加熱の原理を理解していないこと、そもそも使用頻度が高いこと、電子レンジ対応包装のレトルト食品等の増加に慣れており注意書きを読まないままとりあえず電子レンジで加熱してしまう人が多いことなどが理由として推測できる。
電子レンジはだれでも手軽に扱える電気製品であるだけに、過度な信頼を寄せてしまいがちだが、使用方法を誤れば、大きな被害に発展することも考えられる。
同庁の資料では、電子レンジ火災を防ぐために以下の注意を促すとともに、電子レンジの火災実験動画を公表している。
- 1 さつま芋や肉まんなどは、長時間加熱しすぎると急速に燃える危険性があります。
加熱時間を長めに設定せず、取扱説明書や調理方法等よく確認しましょう。 - 2 その場を離れず、食品の様子を見ながら加熱しましょう。
- 3 冷凍食品などは、『袋ごとレンジ不可』など包装の表示を必ず確認しましょう。
- 4 普段から電子レンジの周囲には、可燃物を置かないようにしましょう。
動画 東京消防庁[電子レンジ火災の実験映像]
電子レンジから煙や火が出たらどうする?
電子レンジ内部から煙や火が出てしまった場合どうすればいいのだろうか。
最も避けなければいけないのは、中のものを取り出そうと慌てて扉を開けることだ。
庫内に大量の酸素が入り込めば、急速な爆発燃焼が起こる恐れがある。
衣服に炎が燃え移る危険もあるため、絶対に扉を開けてはいけない。
逆に、扉を閉めたままにしておくことで、庫内では酸欠状態となり炎が収まることが多い。
また、火が消えたとしてもすぐに扉を開けるのはNGだ。
庫内には不完全燃焼によって生成された有毒ガスが充満している恐れがあり、これを吸ってしまうことにより負傷するリスクがある。
東京消防庁では、このように対応を促している。
【万が一火災が起きた時には】 電子レンジの扉を開けずに電源を遮断して、119番通報してください。
[引用元] 東京消防庁[電子レンジを使用した火災が増加しています!~ 過去10年間で最多 ~]
余談だが、過去の同庁の電子レンジ火災への対応指導は3ステップであった。
参考までに2017年の資料を紹介する。
①扉を開けずに電源を遮断する。
②扉を閉めたまま、あわてずに庫内の様子を見る。
③火が消えなければ、扉を閉めたまま、消火器などの消火器具を準備する。
[引用元] 東京消防庁からの大切なお知らせ 電子レンジ火災に注意!
最新の指導と比べると、消火器具の項目が省略されてよりシンプルになっていることがわかる。
以前の書き方では、火が消えなければ消火のために扉を開けることを推奨するようにも読めてしまう可能性がある。
消防指導も日々アップデートが進んでいることが見て取れる。
在宅時間が増える年末年始に向けて、電子レンジ火災への対処法を家族間で共有しておくとよいだろう。