第1回:あれこれ心配なマンション理事長の安眠のために
マンションの大被害!のときに理事長だった
読者のみなさんのなかで、マンション管理組合の理事や理事長を務めていらっしゃる方、またはそのご経験者はどれくらいいらっしゃるでしょうか?
筆者は、2007〜2010年頃に、持ち回りの順番が来たため、当時所有していたマンションの理事・理事長を務めたことがあります(離婚のタイミングでマンションは手放してしまいましたが)
正直なところ、理事・理事長の順番が回ってきたときは「めんどうだなぁ」とか「運の悪いタイミングだったなぁ」とか思わないでもありませんでしたが、実際に仕事を始めるといろいろな勉強にもなり、いまでは良い経験をさせてもらったと感謝しています。
私が理事長だったときは、たまたま大規模修繕のタイミングが来たり、異常に風の強い台風で大被害をこうむったりしました。その過程で「マンションという資産を管理・保全していくとは、何をすることか?」について、嫌でも考えざるを得ませんでした。
あの頃は大規模修繕の準備で、防災の整備はじゅうぶんに手が回りませんでしたが、この連載では、理事長を担った経験から、マンションを管理するうえでのポイントを交えて防災体制づくりについて解説していこうと思います。
マンションは防災面も強い…ほんとうに?
マンションわが国は、人口が1億人を超えているのに国土が狭く、また山間部も多いため、住宅地が高価です。そして住環境としてのマンションは、ポピュラーかつ重要な役割を果たしてきました。
近年では高層マンションの人気に拍車がかかり、都心では発売と同時に売り切れることも珍しくありません。
また、防災面から見ても、地震の多い日本では、耐震性に優れるマンションには安心感があります。
しかしながら、いざマンションで火災や大きな地震が起こると、個人で所有できる一戸建てと違い、住人が協力して対処する必要が出てきます。
マンションの管理組合が中心となって、しっかり防災体制を作っておく必要があります。これが出来て、初めてマンションの強固な耐震性能が生きてきます。
このシリーズでは、マンション管理組合が、来るべき首都直下地震や南海トラフ地震などの大災害に備えて、どのように防災力を高めればよいのか?を考えていきます。
本稿は、次のような内容の連載を予定しております。
・マンションの災害リスクとは?
・マンションの5つの災害リスク
・環境のリスク
・人のリスク
・資産のリスク
・体制のリスク
・資金のリスク
・マンションに必要な防災備蓄
・マンションの自主防災組織
・マンションの災害対策本部
・マンションに必要な訓練
・効果的な訓練とは
本稿では、参考テキストとして、次の3つの資料を使います。いずれもPDF形式ですので、ダウンロードしてご参照ください。
参考資料1:震災対策チェックリスト(公益財団法人マンション管理センター)
参考資料2:マンション防災はじめの一歩(新宿区)
参考資料3:分譲マンション防災マニュアル作成支援ガイドライン(一般財団法人宮城県マンション管理士会)
それでは、次回はまずマンションの災害リスクについて、考えてみましょう。
マンションの災害リスクとは?
あなたがいまお住いのマンションには、どのような災害リスクがあるでしょうか?
もちろん、そのマンションの立地によって、土地ごとの災害リスクは変化しますが、一般的には地震、火災、洪水、液状化などが心配されます。
しかしながら、あなたが心配しなければならないことは、実は他のところにあります。
こんなことが起こるのを想像したことはありますか?
リスク1:地震の揺れが原因で、マンション内に火災が起こったが、発見が遅れたために消火器では消し止めることができなかった。また通報が遅れたうえに、誰も消火栓が使えなかったために複数戸に延焼した。
リスク2:大地震が発生後、停電・断水が起こったが、マンション内には個人個人の防災備蓄品しかなかったため、大半の住人が近くの避難所に避難することになった。生活は不便を極めたうえに防犯上の不安も発生した。
リスク3:地震でマンションに被害が発生したが、管理会社が多忙かつ理事会の対応が遅かった。さらには住民同士の日頃の人間関係が薄いために、人・モノの被害状況がわからず、対応が進まなかった。
まとめてみましょう。
日本に住む以上は、自然災害から逃れることはできません。つまり、マンションにとっての災害リスクとは、自然災害からの直接の被害はもちろんですが、マンション内での防災体制ができていないことによる二次災害や復旧の遅れのことなのです。
次回は、このリスクについて、詳しく見ていきます。
(了)